「あの坂道で・・・風の匂いと共に」
男
| あれからもう3ヶ月になろうとしていた |
| この出会いはやはり奇跡だと思う |
| そして、話せたのは変な風のおかげ |
| でも今は・・・彼女の姿は無かった |
| ― 3週間前の事 ― |
| 毎日通うこの坂道と図書館 |
| 毎日笑顔で待ってる彼女 |
| それが一日の中で唯一の楽しみ |
| 「今日も居るよな」 |
| そう思い歩いて行くと図書館の前には |
| 上司の姿があった |
| 上司「毎日ここへ来てるようだな」 |
| 男「・・・え・・・そうです・・・ちょうど通り道ですから」 |
| すると上司の表情が厳しいものになる |
| 上司が怒る時は、大体の事情を調べた後なのだ |
| つまり、ばれている |
| 上司「お前は成績にもいいと思っている」 |
| 男「はい、ありがとうございます」 |
| 上司「だがな、他の者から話が上がるとは良くない事だ」 |
| 誰かが話した・・・事になる |
| 男「はい」 |
| 上司「これ以上は言わぬ、この道はもう通るな、いいな」 |
| 男「・・・」 |
| 上司はそのまま歩いて行った |
| 男「はぁ、まいったなぁ〜」 |
| それから、彼女の姿は無くなった |
| 男「ふぁぁ〜〜、休みの日こんな朝早く起きたのはいつからだろう」 |
| 日曜日、いつもなら午前中は爆睡してる時間帯 |
| でも今日は違う、もちろん図書館へ向かっていた |
| 彼女の姿を見なくなって3週間 |
| 何故来なくなったのか、その理由はわからない |
| 今思うと何故TELの番号も聞かなかったのかわからない |
| ただ、毎日ここであの笑顔に会える事 |
| 話せる事が楽しみで、それで十分だった |
| けど、こうして会えなくなった時・・・・・ |
| 男「今日は来るだろうか・・・」 |
| なくしてしまう事で更にわかる事があった |
| 午前中は門の前で待った |
| もちろん来ない |
| 門の前でじっと立ってるのは、人に目には不信に写るもので |
| 午後は図書館の中で待った |
| それでも彼女の姿を見ることはできなかった |
| やがて図書館もしまり後にした |
| 男「・・・来なかったかぁ・・・」 |
| 思わず夕日の色で染まる空を眺めた |
| そんな時、突風が吹き砂塵が舞う |
| 思わず目に入り手で押さえた |
| 男「あたたたた、目に入った」 |
| やっと目を開けると、そこには初めてであった時に |
| 彼女が出てきた路地 |
| 男「たしか・・・・」 |
| そう言うと、引き込まれるようにその道を歩いた |
| 初めて歩く道、そのまま歩いて行くと公園があった |
| 男「はぁ、何してるんだか」 |
| そうつぶやくと公園へ入った |
| 「カーン、カーン」 |
| 6時の鐘の音、近くの学校から音がする |
| 辺りも暗くなって、少し肌寒くなった |
| ベンチに座りタバコを吸うと、再び溜息が出た |
| もう一本吸おうとライターに火をつけるが |
| 風のせいか、なかなか火が点かない |
| ゆっくりとベンチから立つと来た道を戻った |
| 再び路地の角を曲がり、図書館の前を通ろうとした時 |
| 門の前に寄りかかる彼女の姿 |
| おそらく下を向いててこちらの存在に気がついてないようだ |
| 高鳴る気持ちを押さえて近づく |
| 男「どう・・・」 |
| 声をかけようとした時、彼女は下を向いたまま |
| 女「ごめんね・・・わたし・・・」 |
| 少しびっくりした |
| 気がついて無いと思っていたからだ |
| 男「ごめん?」 |
| 女「私、貴方の仕事の邪魔はしたくなくて・・・ごめん・・・」 |
| やっと理解できた |
| 彼女は上司に怒られてるところを見たんだと |
| 男「いいんだ、もうさすがに仕事中はなかなか会えないかもしれないけど」 |
| 女「けど?」 |
| 男「仕事が終わってからや、休みの日に会おう」 |
| 女「・・・・・」 |
| 思わずどきっとした、もしかしてぜんぜん変な方向を言ってしまったのかと |
| 女「うん、いいよ」 |
| 初めて顔を上げた、目が俺を見つめた |
| 少し涙の後がある |
| 俺は慌てて携帯を出すと言った |
| 男「言うぞ」 |
| 女「え!・・あ、ちょっとまって」 |
| 慌てて彼女はバッグの中の携帯を探す |
| 男「はははは、そんなに慌てなくてもいいんだよ」 |
| 女「もう・・・いじわる」 |
| 男、女「ははははははははは」 |
| その後、二人は肩を寄せ合い歩いて行った |