「ある喫茶店で・・・香りと風と」


”カランカラン”
いきつけの喫茶店へ入る
毎日ここで飲む珈琲が楽しみだ
そして・・・
「ん?・・」
今日はどうやら先を越された
いつもの定位置、カウンターの端に座っている一人の女性
何時からは分からないが、とても悲しい目をしてる女
ただのおせっかいかもしれない
でも、どうしてもほってもおけなかった
男「隣いいですか?」
女「ええ、どうそ」
やはり彼女の目は悲しみに包まれてるように感じる
男「珈琲好きなんですね」
女「・・・まぁそうかもしれません」
男「まぁ?」
女「ごめんなさい、元々は紅茶が好きだったんです」
白く細い指でカップのふちをなぞる
少しの間の後再び話始めた
女「珈琲はこの苦味が嫌いでした」
男「じゃぁ何故?」
女「つまらない事なのかもしれません」
カップを口へつけると残りの珈琲を飲んだ
女「お先に」
短い言葉を残すと店を出て行く
 
それから彼女は店には現れなかった
やっと話せた短い時間も今では遠い記憶にすぎない
それでもカウンターの端を一つあけて座った
彼女の最後の言葉がひっかかる
つまらない事と分かっていて珈琲を飲む
好きでもない珈琲を飲む
それの意味はつまらない事
それが彼女の悲しみへ繋がってるのかもしれないと思った
 
そして一月が経ったある日
同じ場所で珈琲の香りを楽しんでいると
喫茶店のドアが開き、冷たい風が流れてきた
気にもせず飲み干そうとした時
一人の女性が隣へ座った
男「・・・この間はどうも」
そう、彼女だったのだ
女「・・・どうも」
女性は珈琲を頼んだ、この空いた時間を感じさせないみたいに
男「ずっとここへ通って、この場所にいたんですよ」
女「ずっと?・・・」
男「ええ、どうしても一言伝えたかったのです」
女性はすっとこちらを見つめた
男「ただ偶然にこのあいだ話しかけたのではないのです」
女「・・・・・」
男「貴方の悲しそうな目を見て、ほっとけなかった」
女「・・・・・」
男「だから、これからも来ます」
彼女の瞳が潤んだように見える
男「貴方と話すために」
そして彼女はままうつむいた
俺は馬鹿なのかもしれない
けれどこの気持は嘘ではない
だから通うだろう・・・これからも・・・