「すぐ近くに存在してる偶然・・・風と共に」
男
| それは目覚めの悪い朝から始まった |
| 目覚まし時計より5分早く目覚めたが |
| 外は大雨、最悪だ |
| 軽い朝食を済ませ家を出た |
| いつもと同じ風景の中で駅に辿り着き |
| いつもと同じ風景の中でプラットフォームにて電車を待つ |
| ”カッ、カッ、カッ” |
| ヒールの音が勢い良く近づいて来る |
| 頭を掻きながら、特に振り向きはしなかったが |
| その音は隣で止まった。 |
| 男「あっ!」 |
| 電車が来ると共に強い風が吹き、思わずスポーツ雑誌を落としてしまう |
| 慌てて拾うとすると、隣に来た女性が拾ってくれた |
| 男「ありがとうございます」 |
| 女「いいんですよ」 |
| 年代は俺と同じかな?、でもキャリアウーマンといった容貌だった |
| いつもと同じように仕事をこなす |
| 男「・・・・・」 |
| 椅子を立ち上がると窓のところへ向かう |
| 男「ん〜〜〜〜〜〜っ」 |
| 大きく背伸びをすると、いつもと変わらない風景を眺めた |
| 少し窓を開けたとき、心地よい風が吹く |
| 男「いい風が吹いてるなぁ〜」 |
| 窓を閉めると屋上へ向かった |
| (この風が吹いてるとすると・・・屋上が案外いいかも?) |
| そう考えたのだ |
| 屋上へ着くと手すりに寄りかかりまた背伸びした |
| 朝からの雨も上がり、薄っすらと太陽が見える |
| 男「たまにはここもいいなもなぁ〜」 |
| 手すりの方に向くと見慣れた風景が少し違うように見えた |
| 男「ん?」 |
| 向かいのビルの窓にこちらを見てる女性の姿が見える |
| 俺に気付いたかわからないが、奥へと姿を消した |
| 男「どこかで見たような・・・・」 |
| 男「ふぅ〜〜」 |
| 外はすっかり暗くなり、町はまた違った盛り上がりを見せている |
| 人の少なくなったオフィスを出ようとした時 |
| 上司「飲みにでも行くか?」 |
| 男「そうですね」 |
| まぁ〜つきあいだ仕方が無い |
| いつもの店で上司の説教を受けながら一日が終わろうとしてる |
| 男「お疲れ様でした」 |
| 上司「おう、また明日な」 |
| 上司は上機嫌で店を出て行く |
| その姿を見送って駅に向かった |
| 男「少し飲みすぎたかなぁ〜」 |
| 自販機の前でポカリを買おうとコインを入れる |
| ボタンを押し缶を取って開けようとした時 |
| 思わず缶を落とした |
| 男「俺、酔ってるのか?」 |
| 落とした缶を拾おうとしたが、缶が転がって行く |
| 男「おいおい」 |
| 転がる缶を追いかけ、やっと拾ひろう事ができた |
| 次こそはと缶を開けると一気に飲み干す |
| 正面を向いた時 |
| 男「ん?・・・公園か?」 |
| 今までは知らなかったが公園があるみたいだ |
| 何気なく公園の中へ歩いた。 |
| 思った以上に公園は暗く人の気配もない |
| ごみ箱へ缶を捨てると公園を出ようと来た道に振り向いた |
| その時ふと急に香水の匂いと気配を感じた |
| 男「ん?」 |
| 香水の匂いがするほうを向くと |
| ベンチの所に女性が倒れてる |
| びっくりして慌てて女性のほうへ走った |
| 男「大丈夫ですか?」 |
| 駆け寄ると、女性は何事も無いように振り向いた |
| 女「え?、大丈夫です」 |
| 男「いやぁ〜倒れてるように見えたので」 |
| 女「あ〜、すみません、携帯を落としてしまって、暗いので見つけられなくて」 |
| 男「そうですか」 |
| そう言うとベンチの後にある茂みを覗きこんだ |
| 確かに暗いがかすかに月の光で見つける事ができた |
| 女「ありがとうございます」 |
| 男「いいんですよ」 |
| 男「・・・・・」 |
| 女「・・・・・」 |
| 何か今日同じような状況が・・・・・ |
| 雲に隠れた月が出たとき、お互いの顔がはっきりと見える |
| 男「あっ・・・・・ヒールで走る」 |
| 女「あっ・・・・・スポーツ誌を落とす・・・・・ビルの屋上でさぼる・・・・」 |
| お互いに目を大きく開けてお互いに言い放題だ |
| 少しの沈黙の後、お互いに笑い出した |
| 男「今から何処へ?」 |
| 女「駅です」 |
| 男「同じだ、じゃぁ〜一緒に行きますか」 |
| 女「そうですね」 |
| おそらくは今まで何度も会っているのかもしれない |
| でも、出会いは今日なんだ |
| 決してすれ違いだけの出会いではなく、男と女としての出会い |
| 男「偶然なんてあるんですね」 |
| 女「ええ、でもいい偶然かもしれませんね」 |
| 男「ええ、是非そうであって欲しいな」 |
| 女「そう思ってますよ」 |
| そして、心地よい一日で終わった |