「蛍舞う景色・・・蛍と想いと風と」
男
| 男「蛍の季節だなぁ」 |
| 今年もまた蛍の季節が訪れた |
| しかし行こうとは思っていても、なかなか・・・ |
| おそらくは今年も見に行かないかもしれない |
| 仕事が終って家に着くと時計を眺めた |
| もう午後9時、蛍の名所へ行くには遅い |
| 男「はぁ、疲れたなぁ」 |
| そのまま横になると天井を眺めた |
| 男「なんだかなぁ」 |
| 目を閉じると昔の思い出を思い出した |
| 男「今も飛んでるのかな」 |
| 起き上がると車に乗って走り出す |
| 誰も居ない普通の田舎道 |
| 普通に道があって、その道沿いに小川が有るだけ |
| 何故ここへ来たかと言うと |
| まだ高校生の頃、部活で遅くなった帰りにここで蛍を見ていた |
| 今思うと本当かと疑いたくもなるが、確かにここで飛んでいた |
| 土手に座り周りを眺めると |
| 暗闇に目が慣れて来て、数匹蛍が飛んでいるのがわかった |
| やはりこの川も汚れてきているのだろう |
| 前はもっと沢山の蛍が飛んでいたのに |
| そんな時だった |
| 草木が風で揺れると、目の前一杯の蛍が飛んだ |
| 男「おおおお〜」 |
| 女「綺麗っ!!」 |
| その蛍の多さと綺麗さにびっくりすると同様に |
| すぐ近くで女性の声がしたのにもびっくりした |
| 女「ごめんなさい、驚かすつもりは無かったんだけど、綺麗だったから」 |
| 今居る所から3〜4mしか離れてない所に気配がする |
| 男「いえいえ、気にしないで下さいね」 |
| 女「ありがとう」 |
| それから少しの間蛍を眺めていると |
| 再びその女性が話しかけてきた |
| 女「聞いてもいいですか?」 |
| 男「どうぞ」 |
| 女「この場所の事どこで知ったんですか?なにせローカルだから」 |
| 男「あ〜実はここの近くの高校へ通っていたから知ってるんです」 |
| 女「私もそうなんですよ、減ったと思いません?蛍」 |
| 男「確かに昔はまだ沢山居たと思うね」 |
| 女「ですよね?」 |
| まさか同じ高校出身だとは思わなかった |
| それから蛍を眺めながらいろいろと話していると、どうやら一つ下らしい |
| 月明かりが辺りを包んでお互いの顔が見えた時、言葉が詰まった |
| 何故なら彼女は・・・ |
| 女「あ〜○○先輩じゃないですか」 |
| 男「・・・はは、久しぶりだね」 |
| なんと、高校の頃に好きだった彼女だったから |
| それからまた普通に話したけれど、心臓がどきどきと波打つのは抑えれない |
| あれからまた綺麗になった彼女はやはり魅力的で |
| 女「そろそろ帰りましょうか?」 |
| そういうと彼女は立ち上がった |
| 男「そうだね」 |
| 同じく立ち上がると歩き出す |
| しかし俺は心でもう一度会いたいと強く思った |
| 不完全燃焼で終った高校の夏・・・今、その時の想いが強く燃え出す |
| 男・女「あの」 |
| 同時にそう言う |
| 女「あのいいですよお先に」 |
| 男「いやいや、そちらからどうぞ」 |
| 女「先輩、だめでしょ男からどうぞ」 |
| 懐かしい・・・昔もそう言われた |
| 男「じゃぁ〜・・・・・・、もう、もう一度会えないかな?」 |
| 力なく発したその言葉を聞いた彼女は笑みをもらす |
| 女「じゃぁ〜問題です」 |
| 男「ん?」 |
| 女「高校の初夏、初めで最後だった日。その日にここで会いましょう」 |
| 彼女の言った事がよくわからなかった |
| 女「その日にまた会えたら、沢山話しませんか?」 |
| にこりと笑顔で彼女は歩き出す |
| 車へ向かう間ずっと考えても思い出せない |
| これで終わりなのかと思うほか無かった |
| 車を運転しながらいろいろ昔を思い出す |
| 俺にとって高校の初夏と言えば一つしかない |
| その頃好きだった彼女は、同じクラブのマネージャーで人気があった |
| そして想いを寄せながら、ある日誘った |
| 男「あのさ」 |
| 女「あの」 |
| あの時も今日みたく同時に話し出した |
| そして |
| 女「あのいいですよお先に」 |
| 男「いやいや、そちらからどうぞ」 |
| 女「先輩、だめでしょ男からどうぞ」 |
| 今日と同じく言われた |
| 思わず笑えてくる |
| 男「蛍の季節だしさ、人は多いと思うけれど見に行かないか?」 |
| 女「誘ってるんですかぁ?」 |
| にやりと笑う彼女はまた可愛かった |
| 蛍と言えば、この高校の近くに学生だけが知ってる蛍の名所が有った |
| 女子生徒「○○ちゃん、はやく行こうよ」 |
| 遠くから彼女を呼ぶ声がくる |
| 男子生徒「お〜い、始まるぞ」 |
| 俺にもお呼びがかかる |
| 女「何時ですか?」 |
| 男「ん?」 |
| 女「蛍見にいくんでしょ?」 |
| 男「今日部活が終ってからでどう?」 |
| 女「今日ならたぶん行けます」 |
| 男「じゃぁ〜後で」 |
| 女「はい」 |
| そういうとその場を離れた |
| 正直びっくりだった |
| 彼女が俺の誘いにのってくれるとは |
| そしてその日部活が終ると、蛍の名所へ向かった |
| そして・・・ |
| 男「・・・・・」 |
| そこに見た風景は、数人の同じ高校の生徒と沢山の蛍と |
| 少し離れた場所で男に抱きしめられる彼女だった |
| その日はそのまま帰った |
| 正直どうすればいいのかわからない |
| 彼女には彼氏がいるという噂だったし |
| ただ・・・誘いにのってくれたのは・・・何だったんだろう |
| そしてそれから卒業までの数ヶ月、彼女と話をする事もなく卒業した |
| 男「ほんと懐かしいなぁ〜、今思えば笑えるかな」 |
| しかし今日会えた事、そしてやはり今でも好きなのだと実感させられた事実 |
| なんだろう?何かひっかかる・・・ |
| 男「あっそういえばあの日って・・・今日と同じ日・・・まさか」 |
| 急に車を止めると、再び来た道を引き返した |