「田舎・・・風と風景と」


「遅かったわねぇ」
男「お久しぶりです」
普段はアスファルトしか無い街で働く俺が
今はこうして緑だらけの地に立っていた
唯一の”田舎”がここには存在していた
「昔は毎年田植えを手伝ってくれてたのにね」
男「はは、そうですね。今は仕事が忙しくて」
「冗談よ、でもゆっくりしていってね」
今年最初で最後のたった3日間の夏休みだ
木造平屋の外には田んぼが広がり美味しい空気と
綺麗な緑の自然が広がっている
男「癒されるなぁ〜やっぱ自然は」
案内されたお決まりの部屋から外を眺めた
クーラーも無いのに、外から入る風が涼しい
まったく考えられない世界がそこにはあった
 
男「少し散歩へ行ってきます」
「夕飯までには帰ってね」
そう聞くと家を後にした
昔よく行った秘密の場所へ行く為に
道を歩いていると村の人達が「こんにちは」と話しかけてくれる
人の温かさも感じる事ができる世界
普段では絶対に考えられなかった
男「ん?」
何かを感じ後ろを向くと横を見ながら自転車の運転をしてる女性
だが目の前に少し大きな石が有る
もちろん気が付くわけもなく走っていた
男「危ないですよ!!」
その声が聞こえたと同時に見事に彼女は倒れていた
女「いったぁ〜いなぁ」
ほこりをはたきながら立ち上がる
女「アイスが・・・はぁ」
こちらを向くとペコリと頭を下げた
女「ありがとうございます」
男「いえいえ、大丈夫ですか?」
するとにこりと笑った彼女は再び自転車へ乗った
今転んだと思えば立ち上がり自転車へ乗りにこりと笑顔
まったく不思議な子だ
女「この村の人じゃないでしょ?」
急に聞かれてびっくりする
男「あ、あぁ〜そうですよ」
女「都会の匂いがする」
男「都会の匂い?、ははそんな匂いするかな」
女「ぜんぜん、女の勘よ」
男、女「はははははははは」
思わず二人とも吹き出した
女「そだ、助けようとしてくれたお礼にアイスをおごるわ」
男「いいよ、助ける事に間に合わなかったし」
女「いいの、私も食べてる途中だったから」
そういうと先に自転車を押しながら歩き出した
思わず後をついていく
駄菓子屋へ着くまでに少し彼女と話をした
この村に生まれて今までずっと過ごしている事
いつかは都会へと考えながらさえないマーケットでアルバイトなど
やっと駄菓子屋へ着くと”あずきバー”を買ってくれた
店の前にあるベンチに座って食べるとこれがまた美味しかった
女「美味しいでしょ?」
男「うん、うまい!」
女「そんな大声で言わなくても聞こえるよ」
男・女「ははははは」
再び笑いが溢れた、まったく不思議だこんなに心から笑えるなんて
女「そだ、だいたい何処へ向かってたの?」
俺は少し考えると言った
男「秘密の場所」
彼女は不思議そうな顔をしながらにやりと笑った
女「よし、じゃぁ〜いこ」
男「行こ?」
女「アイスのお礼返しにそこへ案内して」
男「なんでだよ、今度はアイスのお礼?」
そういいながらも彼女の笑顔に負けていた
 
女「本当にこんな山奥?」
男「んん〜〜もう7年前の記憶だからなぁ〜」
2人アイスを食べ終った後早速秘密の場所へ向かった
男「もう少しのはず」
道無き道を進んでいた
もうこの辺りで実はもうわからなくなっていた
女「こんな所に何か有るって聞いたこと無いよ」
俺は目を閉じ思い出そうと心を落ち着けた
するとある方向から涼しい風が吹いて来た
男「こっちだ!!」
その方向へ少し進むと急に目の前が開けた
女「わお・・・すごい・・ね・」
そこは木々も無く崖になってはいるが、村全域を眺める事ができた
男「良かった・・・あった・・・」
女「あった?、もう迷子になっちゃう所じゃない・・はは」
そう言いながらも精一杯の笑顔で笑ってくれた
そして無言で2人座って景色を眺めていた
女「こんな所があるなんてねぇ知らなかったなぁ」
男「だから秘密の場所なんだよ」
女「そうだね・・・そだ、この村にいつまで居るの?」
男「後3日間だね」
女「そかぁ〜じゃぁ〜明日から何するの?」
男「特になし」
女「じゃぁ〜・・・」
涼しい風が二人を包み込む
そして思い出したんだ
昔カブトムシを取りに1人でこの山に入り迷子になって
あの時もこの風に助けてもらってここへ来た事を
さて、何もなかった3日間の予定は全て予約済みとなった
いい夏休みになりそうだ