「季節外れのビーチ・・・偶然と風と」


そろそろ桜の開花の季節
気分転換にドライブへ出た
今日は平日・・・実は午後から休みをとった
むろん理由と実際とは違う
最近仕事にやる気が出ない、やりがいを感じない
そういう意味でも気分転換がほしかった
男「やっぱすいてるなぁ」
平日はすいていて、混む事も無くドライブができる
青い海が見たくて、ただ何も考えずに海へ向かっていた
途中のコンビニで昼食を買うと
車でそのまま昼食を食べる
道路の反対側にはもう青い海が見える
ぼーっとその海を見ながら食べる昼食もまた気持良い
コンビニでごみを捨てるとまた走り出した
 
もうかれこれ2時間は運転していた
目的地の無いドライブだったのでそろそろ引き返そうかと考えてると
標識に展望台と書いてあった
男「行ってみようかな」
道を曲がり少し山奥へ入るとその展望台入り口が見えてくる
近くの駐車場に車を止めると展望台へ向かった
男「んん〜〜気持いいなぁ〜〜」
高台に有るその展望台は見晴らしが良く
風が気持ちよかった
何をいったい悩んでいたのだろうか?と不思議になれるぐらいに
山と海と・・・そして風
もういつからだろう、そんな風景を見なくなっていた
自然はやはり心を癒してくれるのだと思えた
30分ぐらい居ただろうかベンチから立ち上がると展望台を降りた
丁度展望台の登り口で1人の女性が立て札を見ていた
こちらに気が付き向き会釈をする
思わず会釈を返すと
女「あの、結構展望台まで有りました?」
確かに登った階段は少し辛かった、けれどあの風景は綺麗だったし
男「そうですね、少し辛いかもしれないですけど最高の景色でしたよ」
そう答えた
女「そうですか、ありがとうございます」
その女性はそう言うと、もう一度会釈をして登り始めた
その後姿を少し眺めた後、車を停めている駐車場へ着くと自販機へ向かった
缶コーヒーを買うと取り出し口へしゃがんだ
男「んんっ!」
少し強い風が砂を巻上げ見事目に入った
男「いたたた」
缶を取り立ち上がってやっと目を開けるとそこには観光地案内がある
とりあえず眺めていると、この近くにビーチが有るみたいだった
男「とりあえず行ってみるか」
車に乗り込むと、そのビーチへ向かった
 
5分ぐらいだろうか、思ったより近くにあった
駐車場は1台の車も停まってなく
見渡すと人家が多い、おそらくは観光名所としてできた場所なのだろう
車を降りるとビーチへ向かった
男「んん〜〜気持いいなぁ」
片手に缶コーヒーを持ったまま背伸びをする
肌寒い季節に人が居るわけではなく
それでもビーチは静かに波打っていた
少し肌寒い潮風も、また気持良い
少し遠くには離島も有るし、ビーチの端にある堤防では釣り人が居た
海の家には無論誰もおらず、有るのは自販機だけ
砂浜に入ると、そのまま波打ち際まで行き海水を触ってみる
男「まだ冷たいな」
それから少し海を眺めて時を過ごした
ゆっくり立ち上がると堤防へ向かってみる
少し歩きにくい砂浜を歩きながらふと思った
何をそんなに悩んでいたのだろうと
同じ事の繰り返しの毎日に、少し疲れていたのかもしれない
今日のこのドライブは来て良かった
やがて堤防に登ると端に腰掛けて無言で海と空と眺めた
 
女「あのー」
急に背後から女性の声がして振り返った
男「はい?」
女「これ、貴方の携帯ですか?」
確かに彼女の手に握られた携帯は俺のだった
男「ありがとうございます」
女「砂浜に落ちていて、そこからここへ足跡があったから」
男「そっか、さっき落としたんだ」
女「隣いいですか?」
男「ええ、もちろん」
彼女は隣に腰掛けると話し始めた
女「さっきはありがとうございます」
男「さっき?」
女「あら、展望台の所で」
男「あ〜あの展望台で話した方でしたか」
彼女は少し笑うと話を続けた
女「実はこの場所がお気に入りで良く来てるんですよ」
男「確かにいい所ですね」
女「でも、いつもあの展望台の前を通り過ぎるんですけど、一度も登ってなくて」
男「でも今日は」
女「ええ、登ってみようと寄ってみたんですけど、あの階段・・・」
男「はは、確かに入り口から見る階段はすごいですね」
彼女は自分の足をこつこつと叩きながら話した
女「でも、景色が良いって聞けたんで頑張って登りましたよ」
男「綺麗だったでしょう?」
女「ええ、お気に入りに追加です。ただぁ」
男「ただ?」
女「毎回はちと辛いですね」
そう言うと2人同時に笑った
彼女は背伸びをしながら聞いてきた
女「ここへ良く来るんですか?」
男「今日が初めてで」
女「そうなんですか」
男「お気に入りに追加ですね」
そう言うと再び2人は笑った
こんなに普通に笑えながら話をするのはもういつだったろうか
それほど笑いとは遠のいていたように思える
女「今日はお休みですか?仕事」
男「実は・・・さぼりでして」
女「あら、お仲間ですね」
男「じゃぁ〜」
女「ずるです」
同じ境遇2人がここに存在している
そう思うだけで不思議と安堵感を感じるのは気のせいだろうか
それから少しの間二人で話をしていた
冷たかった潮風が少しだけ暖かく感じる
男「また、ここで話しませんか?」
そう言うと彼女はこちらを向いて微笑んでくれた
今日のドライブは他の意味でも、大正解だった
この場所は秘密の場所にしよう