「レンズ越しのキャンバス・・・風と想いと」


とても気持良い風が頬を通り過ぎる昼下がり
公園のベンチでノンビリ珈琲を飲んでいた
男「さてっと、そろそろ行こうかな」
飲んでしまった珈琲の缶を捨てるべく
自販機の前まで歩いた
丁度その自販機の前に1人の女性が立っていて
かなり悩んでいるようだった
まったくこっちに気がついていない様子
少し静かに缶を捨てるとその場を去った
ただ、気になる事が一つ
かすかに嗚咽みたいな声が聞こえた事
男「ま・さ・か・・・なぁ」
画材の入った大きなバッグを方に下げて公園の端に有る
小さな丘へ向かった。
 
小さな椅子を組み立てるとなんのへんてつも無い風景に向かって
鉛筆でその風景を描いてみた
実は初心者で、今日が始めての試み
男「やっぽ俺って才能ないかも・・・」
少し書きあがったその絵は・・・小学生並みだった
男「はぁ」
鉛筆を置くとぼーっと風景を眺める
彼女と別れて1月、会社も数回休みながら苦しんだ
理由は考え方の違い、分るようで分らない世界だった
俺は元々カメラが趣味で、彼女は絵を描くのが趣味だった
未練では無く、絵を描いてみる事で自分に足らなかったものを探してみようと思った
空を眺めながらそのまま草むらに横になった
男「気持いいなぁ」
寝ながら背伸びをすると最高に気持ちよかった
見えるのは青い空だけ、何もかもが小さく感じた
”ササッ”
どうやら誰かがこの丘へ来たみたいだった
一応”入るな危険”と書かれてる場所なので子供では無いだろう
足音はだんだん近づいて通り過ぎた
ゆっくり起きてみると1人の女性がカメラを覗きながら風景を撮っている
どうやらこちらには気がついてないようだった
思わず息をひそめながら見ていると首を何度もかしげている
女「んん〜〜〜・・・・・んん〜〜〜・・・」
黙って見てると以外に笑える
このまま黙っているのも心もとなくとりあえず音でも立てようかとした時
彼女は後ろを振り向いた
女「・・・ども・・・」
男「・・・こんにちは・・・」
女「先客が居たんですね」
そう彼女は笑いながら言うとこちらへ向かって来た
正直初めてなのにこの親しさにドキドキしながらこちらへ向かう彼女を凝視していた
彼女は目の前まで来ると
女「ん?顔に何か付いてます?」
男「はは、いえいえ何も」
にっこり微笑みながらそうい言った
女「絵を描いてるんですか?」
男「ええ、でも実は今日が初めてですでに自分の才能の無さにびっくりしてます」
女「同じですね」
男「同じ?」
女「実は今日始めてカメラで風景を撮ってるんですが、やはり才能無いかなぁって」
男・女「・・・ははははは」
思わずその状況に2人とも笑ってしまう
彼女は隣に座ると話し出した
 
話によるとこう
最近彼と別れて趣味だった絵では無く、彼の趣味でもあった写真を始めたと
未練かもしれないけれど、いつも何を見ていたのか?それに少し興味が湧いた
・・・・・今の自分に似てるように思えた
女「有る意味・・・同じですね」
男「ほんと、偶然とは言え同じですね」
2人空を眺めながら少し沈黙した
男・女「もし・・・良かったら・・・」
同時にそう言った時には再び笑えた
何をかと言うと、お互い得意とする分野をお互いにアドバイスをする事だった
結局夕方までお互い教えあい時を過ごした
でも、お互い熱心に教え聞いてるこの時間はとても有意義に感じた
やがて夕日が見える時刻になり彼女は立ち上がった
女「そろそろ・・・帰ります」
男「そうですね、気をつけて」
女「今日は本当にありがとうございます」
男「いえいえ、こちらこそとても参考になりました」
彼女は会釈すると歩き出した
その後姿を見ていると、またこうして話をしてみたいと・・・そう思う
声をかけようと立ち上がろうとするが決意が出なかった
その時、背後の夕日から暖かく強い風が吹いてきて
勢いがつき立ち上がる
男「あの!!」
女「・・・はい?」
男「また、こうして話を・・・アドバイスを・・・」
うまく言葉にならない
でも彼女はにこりと笑うと言った
女「来週の日曜日、ちょうどお昼ぐらいにどうですか?」
男「はい、また来週」
そう言うと再び彼女は歩き出した
力が抜けて再び夕日を眺めながら思った
こうしてお互いの趣味を見つめる事も本当は必要だったのかもしれない
男「これで、この趣味も続きそうだなぁ」
ゆっくり立ち上がると夕日を背に歩き出した
また来週ここで