「黄昏を眺めながら・・・風と共に」


男「はぁ〜」
最近溜息が多い
仕事も生活も、何もかもが新鮮でなく
ただ流され生きてるように思えて・・・
男「はぁ〜」
時計の針は午後5時をさし、今日も一日が終わろうとしている
男「お疲れ様でした」
タイムカードを押すと会社を後にした
 
いつものようにバスへ乗り家路に向かう
今の仕事に不満がある訳でもない
ただ・・・平凡すぎるように感じてしまうだけ
男「・・・今日はやけに混んでるなぁ」
いつもよりバスが混んでいて自分では立ってられないほどだった
ピンポーン”
次のバス停で降りる人が居るらしい
その流れに入り降り口の近くへ移動した
5.6人だろうかこのバス停で降りてゆく
おばあさん「私もおります」
背中の曲がったおばあさんが人ごみを分けて来る
なかなか進めず困ってるようだ
(んん〜〜)
思わずおばんさんを誘導してあげてバスを降りた
おばあさん「ありがとうございます」
曲がった腰を更に曲げお辞儀をする
男「いえいえ」
笑顔で返した
ただ問題なのが、俺が降りるバス停は一つ先だった事
ほっとけなくて下ろそうとしたら・・・自分も降りるはめに
男「まぁ〜いいか」
歩けばいいだけ、こんな小さな出来事が何故か新鮮に感じた
肌寒い路地を歩きながら空を眺める
男「そろそろ・・・日が落ちるかな?」
そうつぶやきながら視線を戻そうとした時、路地裏への道案内表示に
『黄昏の展望台』と書いてあるのを見つけた
男「ん?・・・黄昏?」
思わずその言葉に引かれて路地裏へ入る
 
10分ほど歩いて行くと小さな公園があった
男「ん?まさかこれだけじゃぁ〜」
ゆっくり周りを眺めると公園の端の方に更に道があった
更に奥へ進むと小さな展望台
男「ふぅ〜〜案外疲れたなぁ、運動不足・・・だな」
額の汗を拭うと展望台へ上がる
男「ん?」
先客が居た、女性みたいだ
手すりまで進むと、人家の屋根の上に夕日が
さっき書いてあったように・・・黄昏が綺麗に見えた
言葉が出ない
こんな所にこんな綺麗な黄昏の見える展望台が有るとは
男「・・・・・綺麗だ・・・・・」
思わず声に出てしまった
すると・・・・・
女「綺麗・・・ですね・・・」
そう女性は答えてくれた
それから無言の時が流れる
無言の時を崩したのは彼女の方からだった
女「実は今日初めてここへ来たんですよ」
男「それは奇遇ですね、じつは私も初めてなんです」
女「そうですか」
男「ええ、でも綺麗ですね・・・黄昏・・・」
女「そうですね」
不思議と違和感無く話し、またゆっくりと黄昏を眺めた
次に無言の時を崩したのは俺だった
男「今日はたまたまバスで一つ前のバス停で降りたんですよ」
女「そうなんですか」
男「ほんの小さなきっかけなんですけどね」
女「実は私も一つバス停を一つ先で乗ろうと歩いていて・・・ここを見つけたんです」
男「・・・はは、本当に奇遇ですね」
女「そうですね」
やがて日も落ち、冷たい風が吹いてくる
女「寒い・・・」
なんだろう?・・・今日は新鮮な事が沢山起き気持ち的にも気分がいい
こんな奇遇にも出会いが存在した
男「どうです?、奇遇代わりに一杯でも?」
女「・・・そう・・・ですね、温まりましょうか」
自然だった、不思議なほどに・・・
二人は展望台を降り、その場を去って行った