「海の家・・・潮の香りと風と」
男
| 男「んん〜〜〜〜〜」 |
| 両手を空へ伸ばし背伸びをする |
| 目の前には夕日に染まる海が広がっていた |
| この1週間は仕事の事を忘れて、この海でエンジョイできた |
| 来年この時期に休みが取れたら、また来たいと思う |
| 小さい頃から良く来ていた秘密の海岸 |
| これからもずっと秘密 |
| 背伸びが終わるとある言葉を思い出す |
| 男「覚えてますか・・・かぁ」 |
| その言葉が心から離れない |
| 岩場に腰を下ろすと昨晩の事を思い出した |
| 男「・・・ん?、去年の花火大会の時も確か荷物を持ってあげた子がいた・・・」 |
| 急に忘れていたはずの記憶が浮かび上がり |
| 言葉の意味がわかった |
| 男「こんにちは」 |
| 親戚「おお、良く来たねぇ」 |
| 男「えぇ、休みが取れて久々に来たいと思って」 |
| 親戚「懐かしいねぇ、小さい頃は毎年来ていたしね」 |
| 男「はは、それはもうかなり昔の話で」 |
| 親戚「私にとっては昨日の事のようだよ」 |
| この海の家には、小さい頃毎年夏休みに来ていた |
| 大人に近づくほど来なくなり、去年来た時はもう10年ぶりとなっていた |
| 汚い空気と汚い水、毎日のストレスとの戦い |
| ある日ふとこの海の家を思い出し去年来たのだ |
| 実際良い刺激とリフレッシュにもなり、今年もこうしてやってきた |
| バイト「いらっしゃいませ!!」 |
| いきなり元気の良い声と共に笑顔でそう言った |
| 男「はは、私にはいいんだよ、客ではないし」 |
| 親戚「はは、じゃぁ〜ゆっくりしていってね」 |
| 男「ありがとう、もちろん手伝うから」 |
| 親戚「頼もしいねぇ〜〜昔から、今年のバイト生は5人いるから指導宜しくね」 |
| 男「はいはい、逆に指導されないか心配だな」 |
| そう言うと、その場にいた3人とも大笑いした |
| 1日目は夕方に着いたので、夕飯を食べるとそのまま寝た。 |
| 次の日の朝は、会社に行く時と大きく違いなんなく朝早く起きる事ができた |
| これも環境の違いだと大いに思える |
| 食堂へ行くとバイト生がもう来ていた |
| 男「みんなおはよう」 |
| バイト生「おはようございます!」 |
| 男「はは、朝から元気がいいね、でも早いんだなみんな」 |
| バイト生「あ〜住み込みでバイトなんです」 |
| 男「なるほど」 |
| そう言うとみんなのこなしている事を手伝い始めた |
| みんななかなかうまく料理ができていっていた |
| 親戚「みなさんおはよう」 |
| 男&バイト生「おはようございます」 |
| 親戚のおばさんが隣に来ると聞いてきた |
| 親戚「どうだい?今回のバイト生」 |
| 男「うんうん、手際もいいしかなりいいんじゃないの?」 |
| 親戚「うんうん」 |
| 満足そうに微笑みながら接客へ向かう |
| 再び作業を始めると、隣に居る女の子が話してきた |
| 女「あのぉ」 |
| 男「ん?、なんだい」 |
| 女「去年も来てませんでした?」 |
| 男「そうだけど、何で知ってるんだい?」 |
| 女の子は急に笑顔になって言った |
| 女「私2年目なんです」 |
| 男「おお、そうなんだ道理でテキパキしてるわけだ」 |
| 女「ありがとうございます」 |
| 男「いえいえ、見たままの事を言っただけだよ」 |
| その会話が終わる頃仕事が忙しくなり、それ以上の話はしなかった |
| それからはシーズンと言う事で客も多く |
| 一日中忙しかった |
| そして一日最後の楽しみ |
| 夕日を海岸で見る事、そして泳ぐ |
| 他のバイト生も楽しそうにはしゃいでた |
| さすがにバイト生は大学生なので、若いし元気もいい |
| それを見ているだけでも、元気になってくるし |
| 話をしただけでも、若返るような気もした |
| それから毎日が早く、バイト生とも仲良くなり |
| 一週間はあっというまに過ぎていった |
| バイト日の最後に毎年恒例で花火大会をしていた |
| 今年もおばさんの企画で、みんなで花火大会の準備をする |
| 各人花火を持ち、ビールを飲みながら花火に火をつける |
| たわいもない話をしながら過ごすこの時間はとても心が落ち着いた |
| そして疲れきっていた心と体と、この一週間でだいぶ癒されたようにも思える |
| やがて花火も無くなり、後かたずけをしていると |
| 女の子が一人で花火のくずをたくさん抱えていた |
| そっと近寄るとその荷物を取る |
| 男「重いだろ?、俺が持つからいいよ」 |
| 女「・・・・・ありがとう」 |
| そう言うと、彼女は俺の後を付いてくる |
| 少しの沈黙が流れて彼女が話しかけてきた |
| 女「あの」 |
| 男「なんだい?」 |
| 女「覚えてます?」 |
| 男「ん?なにを?」 |
| 女「去年とか・・・」 |
| 正直な所去年の事はあまり覚えてなかった |
| 女「・・すみません、変な事を聞いて・・・」 |
| 男「いやいやいいんだよ」 |
| その後はずっと沈黙だった |
| 翌日 |
| いよいよバイト生たちとの最後の夕食をとると玄関に集まった |
| 手渡しで給料が払われと、おのずとみんな笑顔になる |
| 親戚「本当にこの2週間ありがとう、おかげで助かりました」 |
| 一人づつの握手が終わりそれぞれ散っていく |
| その中の一人の女の子をそっと見ていた |
| 昨晩の言葉がどうしてもひっかかったのだ |
| 彼女は俺に一礼をすると、そのまま去っていった |
| 親戚「どうするんだい?」 |
| 男「あ〜俺は明日の電車で帰ろうと思ってるから」 |
| 親戚「そうかそうか、でも本当に助かったわ、また来年もね」 |
| 男「ははは、そうだね」 |
| そう言うと玄関を出て歩いた |
| 最後に秘密のお気に入りの海岸へ向かった |
| 男「そうかぁ〜・・・あの時の子だったんだ・・・」 |
| キーワードは2つ |
| 去年も来ていた事 |
| 花火大会の事 |
| 彼女は知っていたのだろう、俺の事を |
| 今思い出しても後のしまつ・・・ |
| 足元にある石を持つと遠くへ投げた |
| 「へぇ〜〜すごいなぁ〜〜」 |
| 急に後ろから声がする |
| びっくりして振り返ると・・・彼女が居た |
| 女「へへ。どうしても話したくて、この場所聞いて来ちゃった。私・・・」 |
| 男「思い出したよ。去年も居て花火大会の時にごみを持ってあげた」 |
| 彼女の目は大きく開き、そして笑顔へ変わった |
| 女「隣いいですか?」 |
| 男「あ〜もちろんいいさ」 |
| 彼女は俺の隣に座ると、今までとはぜんぜん違うように普通に沢山話した |
| 今年もここへ来て良かった・・・そう思う。 |