「小さな公園で・・・夜桜と春風と」


男「へぇ〜」
思わず感嘆の言葉が出た
目の前には数本の桜の木
たった一つの外灯の光で浮かび上がる風景
男「綺麗だなぁ〜」
そっとベンチに座ると再び夜桜を見つめた
今日の昼過ぎに5年ぶりに実家へ帰り
たまたまこの公園の横を通り過ぎた
ちょうど桜が満開で、一家族が花見をしていた
小さな公園で本当にローカルな公園だけど
その時に見た桜が綺麗だったので
夜の散歩に来てみた
缶コーヒーを飲みながら見上げていると
少し風が吹き桜の花びらが舞う
男「本当に綺麗だなぁ」
その花びらを眺めていると、何かが飛んできた
男「ん?」
目の前に転がる物は・・・帽子
そっと拾うと周りを見回した
すると公園の入り口に一人の女性が立っていた
女「あ・・・すみません」
どうやらこの帽子の持ち主らしい
男「いえいえ」
そっと渡すと、香水の匂いがした
女「どうかしましたか?」
男「あっ、いえ何もないですよ、桜・・・綺麗ですね」
慌ててとりつくろうのが精一杯だった
女「ええ、毎年ここへは来るんですよ」
男「近所なんですね。数本だけど・・・綺麗です」
女「人も少ないし、私にとって見れば大穴場なんです」
そういうとくすくすと笑っている
それから少し話をした
この近所に住んでるらしく、実は昼間の花見もここでやったと言う
つまり通りすがりに見た家族の一人だった
不思議な気分になる
女「じゃぁ〜そろそろ帰りますね」
男「あ〜引き止めてしまってすみません」
そう言いながらも少し寂しくなる
彼女は立ち上がるとコクリと頭を下げて歩いて行く
飲み干した缶コーヒーを両手で握りながらその後姿を眺めた
男「・・・・」
ふと桜を見上げると沢山の花びらが舞っていて不思議と勇気が沸いた
そして立ち上がると去ろうとする彼女に向かって言った
男「また、明日も来ます。同じ時間に」
彼女は立ち止まると振り向きながら言う
女「私もきっと来ます」
2人の目の前を桜の花びらが舞った
男「綺麗だ」
女「綺麗」
また明日来よう、そして彼女と話そう
桜の木の下で・・・